2014/11/30 掌編小説
私の彼は長い眠りについた。あれからずいぶん時間が過ぎてしまった。彼の容姿は当時と比べて少しも変わらない。
全文を読む
2014/10/31 掌編小説
風船が降りはじめる以前からこの町は行き詰っていたのだ。それを忘れてはいけない。こうなる前から未来なんかなかったじゃないか。
2014/9/6 掌編小説
誰かに抱かれて眠った記憶というのが、私の中にはないのだ。人肌の温かさに包まれて眠ることが、私にとって唯一の憧れだった。
2014/7/31 掌編小説
あの子は私の欲しいものを全部持っている。だけど私は彼女を妬めない。背中が見えないほど遠い相手には、嫉妬することだって出来やしないのだ。
2014/7/5 掌編小説
私はきっと、彼から大切にされることはないだろうと思う。忘れられずにいるなら、大切にされなくても私は構わない。
2014/6/17 掌編小説
ママの言いつけを破ったことはなかった。大人は子どもより正しいことを言うと、疑いもせずに信じてきたからだ。
2014/5/30 掌編小説
ネリマは一度も地球の土を踏んだことがない。地球はとても良い場所だと、仲間のあいだで噂されている。
2014/4/8 掌編小説
わたしのママは貝なのだ。だからわたしもそのうち貝になる。娘のわたしもいつかは貝になる。
2014/4/6 掌編小説
今日。本当は彼と会えるはずだった。だけど会えなかった。起床してすぐに生理がやって来た。
2014/3/4 掌編小説
その時には、わたしと同じ工場で、わたしと同じ姿形に作られたマネキンがこの店を訪れ、わたしの代りを務める。まるで何事も起こらなかったみたいに。
2014/2/24 掌編小説
普通に生きてるだけなのに、どうしてこんなに虚しくなるのだろう。わたしは何度も考えた。考えるたびに虚しさは募って、新たな洞が生まれた。
2014/1/21 掌編小説
木で出来た小箱がある。私はそれを手のひらに乗せてみんなに見せびらかした。最初に開けたひとの願いをひとつ叶えてくれる魔法の箱だと言った。
2014/1/3 掌編小説
やいタマドリ。おれは幸せ者だ。何故ならおれはこの森の中でいちばん強いからだ。それに引き換えお前は不幸な奴だな。何故ならお前はてんで弱いからだ。
2013/12/24 掌編小説
彼のようになりたいと密かに憧れた。大人になった彼は僕のことなんて覚えていないだろう。
2013/12/22 掌編小説
あなたは毎年町にやって来た。あなたは町に来るたびに描きかけの地図の写しをぼくに一枚くれた。