ゼロ歳記05.新生児期の終わり

 生後一ヶ月を迎える頃、娘はまだ自分の手を「意のままに動く自分の身体の一部」ではなく「意識を集中させた場所に伸びていく謎の物体」として捉えていた気がする。コントロールされていない手はすぐに顔を引っ掻いてしまいこまめに爪を切っても小さい傷が絶えなかった。ミルクをあげる時などは手を口元に持っていってもぞもぞさせていた。

 一ヶ月検診は妻と娘がふたりで受診した。新型コロナの影響で保護者はひとりまでと制限されていたので僕は同行できず。僕は免許がなく妻はペーパードライバーなのでこの日はお義母さんが車を出してくれた。

 娘にとってはこの日が退院以来はじめての外出。僕は駐車場まで見送ったのだけれど、家を出てから車に乗るまでのほんのわずかな時間、午前の日差しを浴びて眩しそうに目を細める娘の表情が印象的だった。あなたが生まれ落ちたこの世界はこんなに明るいんだよ。

 検診結果は母子ともに健康。一ヶ月間「これで良いのだろうか」と何度も何度も不安になりながら手探りでやってきた諸々の事柄に対して「間違えていないよ」と言ってもらえたようでとても有り難かった。

 かくして新生児期は新生児期は終わり、晴れて乳児期に。

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