掌編小説

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三月・いかずち・ライブレポート

ライブハウスを初めて訪ねた日、私はまず、不安な気持ちになった。
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初恋

「あの子が急にこちらを振り向いても心中を見透かされることのないよう、おれは努めて退屈そうな表情を作って、文庫本のページを捲る指先を眺める。おれは恋をしている。十四歳にしてはじめて恋をしているのだ」
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少年アポロの見た宇宙

大切な我が子なのだ。どんな問題が見つかろうとも愛する気持ちに決して嘘はない。だが果たして、この子はきちんと生きていけるのだろうか。学校に行ったり仕事をしたり、他者と心を通わせたりすることができるのだろうか。あるいは何かの拍子に抑圧されていた感情が爆発して他者に危害を加えやしないだろうか。
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弱いヒーロー

「おまえは間違ってねえよ。あいつみたいな生意気な若者には誰かが厳しく言わなきゃダメなんだ。そんなことよりスーツがびしょ濡れだぜ。早く帰って夕飯を食いなよ」
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魔法と森と赤い石

なんでお前は魔法を使わないんだ。魔法を使えばもっとたくさん作品を作れる。もっと多くのひとに届けられる。もっともっと金だって稼げるし生活も良くなるんだ。見たところ飯だってまともに食えていないだろうそんなに痩せてしまって。
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愛とくじらの旅

そのくじらの背中には街があり何人もの人びとが暮らしていた。だけどある時くじらの余命が僅かであることがわかった。自分が死んだあと、背中に暮らす人間たちが行き場をなくさないようにしたいとくじらは考えた。
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もしもナイフがあったなら

映画とかコミックとか小説とかにおいて悪役が悪の道に走った理由を明らかにしていくシーン。それが苦手だなと僕は考える。
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あなたの未来に祝福を

あなたは音楽で食べていくんでしょ?と私が言うと恋人は「そんなの無理だって本当は分かってるんだ」と答えた。「音楽でプロを目指していることにすれば将来への不安から目を背けていられた。でもそうするのもそろそろ限界なんだ。だっておれはもう35歳なんだ」
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黒いウサギは寂しいと

「『キミたちウサギはさみしいと死んじゃうんでしょう? 私もキミがいないと生きていけないよ。私キミ同じなんだね』って、ボクの飼い主だった女の子は、そう言っていたのに」
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いつでも捨てられる

もしも本当に人生に行き詰まったら、そのときは今度こそ死んでしまえば良い。だって僕はもうすでに一回死んでいるのだから。
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てのひらにおさまる無限へ

「母としての自分」と「勤め人としての自分」と「どちらでもない自分」のうち「どちらでもない自分」はもはや息苦しいという次元ではなく寄せては返す育児と仕事の往復に飲み込まれて溺れて息の根が止まる少し前だった。
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ほどけて溶ける。クラゲのように

おれはさあ、クラゲみたいに死にたいと思うよ。水のように溶けて何も残らないというのが、おれが死んだことに誰も気づかないというのが良いんだ。
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海の呪いと緑のしるし

海は世界に通じているというが、わたしにとっての海は、ただただわたしを束縛するものであり、世界を狭める存在でしかないのだ。
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かつて自傷をしていた

自傷の跡。十五年以上も前のものだ。今はもちろん痛くも痒くもないがこれ以上目立たなくなることはおそらくないだろう。
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ヒトと機械の違いについて

ニンゲンと機械の最大の違いは目的を与えられず生まれてくることです。ニンゲンは目的を与えられず生まれてくるから自分が何をして生きるべきなのかがしばしば分からなくなります。機械がそういう悩みを持つことはほとんどありません。