天国を探して

天国を探して

天国を探して-最終話

コンビニの夜勤は午前六時に終わる。家に帰り着くとシャワーを浴びて煙草を一本吸う。あとは何もせずに昼過ぎまで眠る。アサクラは日々をそうやって過ごした。
天国を探して

天国を探して-第7話

親戚の大人たちはことあるごとに兄と比較し「お兄ちゃんとは違って素直ね」とぼくのことを褒めた。だけどそうやって褒められるたびにぼくは悔しく思った。
天国を探して

天国を探して-第6話

この人はかつて私にとって自慢の父親だったが病気を発症してからは私のことを違う女の名前で呼ぶようになった。その女が父にとってどういう存在なのかは知らない。
天国を探して

天国を探して-第5話

今年の四月に入社したアサクラは嫌なやつだった。口数が少なく表情にも乏しく可愛げがなかった。挨拶が出来ず飲み会には出席せず先輩に対する礼儀というものがなっちゃあいなかった。けれど呆れるほど仕事が出来る男だった。
天国を探して

天国を探して-第4話

先輩とはもう別れちゃったよとあたしが伝えると、彼女は左側の口角だけを上げて満足そうに笑い「あなたも遊ばれたのね。可哀想に」と言った。
天国を探して

天国を探して-第3話

アサは変わり者だった。テストの点はいつも良かったけど授業の最中には「この漢字はどうしてこういう形しているんですか」とか「水は燃えないのにアルコールが燃えるのは何故」とか、大人のいうところの「授業とは関係のない質問」ばかりをしていたので先生たちからは煙たがられていた。
天国を探して

天国を探して-第2話

「素敵なものって何? 分からない。教えて欲しい」とアサクラくんは言った。わたしは彼の小さな頭を軽く撫でてから、あなたが良いなと思うものを持っていらっしゃいと伝えた。
天国を探して

天国を探して-第1話

アサクラさんのことを俺は嫌っていた。そして軽蔑していた。今年で二十四歳になるというのにこんなコンビニでフリーターをやっているような男だからだ。
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