特別編8.自分が無力だからこそ


 真夏。妻の体調が目に見えて変化していく。

 特に顕著だったのが食生活の変化。これまで好きだった食べ物の多くを受け付けなくなった。食べられるものがすごく限られる上に毎日変わっていく。「今日は何なら食べられるだろうか……?」というのを食事の時間ごとに手探りで探していく。「コレなら食べられそう」と用意してみても、いざ口にしてみたら気持ち悪い、ということもしばしば。これには本人も物凄くフラストレーションを感じているようだった。

 食事以外にも色々な部分で影響が出てくる。下がらない微熱や日中の強い眠気や疲れやすさ。何より未知の出来事に対する不安。平均的な妊婦さんと比較してどうなのかは分からないが過去に見たどの場面よりも辛そうな期間だった。ふたりの子なのに妻ばかりにキツい思いをさせてしまい心苦しいが肩代わりすることが物理的に出来ない。
 
「男だから」「女だから」みたいな言い回しはあんまり良くないし不用意に使わないよう日頃から気をつけているのだけど、この時ばかりは男の無力さを感じた。

 僕の仕事が基本的に在宅ワークなので傍にいる時間を長く持てたことはありがたかった。女性は身体の変化で否応なしに親になる自覚を育んでいくけど、男性はそうではない。より意思的に親になる自覚を持とうとしないといけない。傍にいたって無力なときは無力だし、できることを可能な限りでやっていくしかないのだけど、自分の自覚を強めていくという意味でありがたいことだと思った。

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