ゼロ歳記07.廻るぬいぐるみ

 新生児の頃には、娘を泣きやませるためにドライヤー音や車のエンジン音をスマホで流していた。これらの音は胎内音に似ているらしく、聞かせるとスッと泣きやんで落ち着いた表情になった。

 けれど生後六週間が経過した頃には、これらの音の効き目が徐々に薄れてきた。「ここはもう胎内ではない」という理解がはっきりしてきたのだろうか。

 代わりに色々なものに興味を示す。グラスの氷が鳴る音。僕や妻の眼鏡。テレビやスマートフォン。

 おもちゃの中ではメリーが気に入っている様子だった。オルゴールふうの音にあわせてゆっくりと廻るぬいぐるみたちを真剣に見つめながら娘は何を考えていたんだろう。お気に入りのぬいぐるみが流れてきたときには手を伸ばして触ろうとしていた。

 この時期には僕の誕生日もあった。三十二歳になった。何もかもが娘中心に回る日々だったので自分の誕生日なんかどうでも良くなっていたのだけど、それでも妻は例年と変わらず祝ってくれたしプレゼントも幾つか用意してくれた。

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