特別編31.声はどんなふうに聞こえているんだろうか


地元をテーマにした映画がテレビ初公開されて話題になっていた時期。

妻は産休。僕は自宅で仕事。なので四六時中一緒に過ごしている。結婚5年目とはいえこんなにも離れることなくふたりで過ごせる機会はなかったので新しい楽しさがある。例えば妻が仕事中の僕にスマホのカメラをこっそり向けてくれるようになった。自分は見た目に無頓着だし写真写りもあまり良くないと思うけれど、それとは別に妻が自分にカメラを向けてくれるというところだけで嬉しい。

スタジオアリスのマタニティセミナーでは僕が妻にできるマッサージのやり方を教えてもらった。妊娠後期の妊婦さんは赤ちゃんに蹴られ続けることで背骨がだんだん外側にずれてきて負担がかかるらしい。これを外側から内側に押し返してあげると良いのだとか。

確かに赤ちゃんが蹴るちからはどんどん強くなる。この時期になると妻が痛がる場面も増えてきた。「すごく強く蹴ってるから触ってみて」と僕がお腹に手を添えるとふっとおとなしくなる。「さてはパパの前でだけ猫を被ってるな」と妻は笑っていた。十数秒ほど手を添え続けているとまたウニョウニョと動く。人格を感じる。僕の声はどんなふうに聞こえているんだろうか。

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