いま午前2時。外からはやや強めに雨の音が聞こえる。台風19号が去ってからというもの降る雨もずいぶん冷たくなりやっと秋めいてきた。子どもの頃は雨が降っても傘をささずに平気で外に遊びに出かけていた。雨に濡れることよりも片手を傘のために費やして不自由になることを嫌った。思春期を過ぎればこれからひとに会いに行くという往路ではさすがに傘をさしたけれど後はもう家に帰るだけという復路で雨に降られてもわざわざ傘を手にすることはなかった。雨の匂いは今も昔も変わらずわりと好きで、高校生の頃なんかは休日に雨が降ると文庫本を一冊買って屋根のある場所のベンチに座り寒くなるまでそこで読み進めた。普段は行かないずっと遠くのほとんどひとが乗り降りしない駅まで出掛けて改札を出ずホームのベンチでそうしたこともあった。
雨の降る夜に夜に街を歩いて頭上を見上げると街灯の明かりの中を通り過ぎる細かな雨粒がある時は鋭い硝子の粉のように見えある時は虫の群れのように見えた。
みなさんどうかお風邪など召しませんよう。