ゼロ歳記53(最終回).ハッピーバースデー


2021年3月第5週。娘は1歳の誕生日を迎えた。1年間でずいぶん大きくなった。娘が生まれた当日には1年後に公園を歩き回っていたり自分の手でご飯を食べたりする姿は想像もつかなかった。僕は以前より誕生日について「生まれたことをお祝いする日」ではなく「生まれてからその歳まで生きてきた軌跡をお祝いする日」だと思っているのだけどこの時ほど強くそれを感じたことはない。娘が生まれた日はついこの間のような気がするのに生まれてからの1年間を語りつくそうと思えば何日だってかかるような気がする。妻はつわりが重いにもかかわらず前日からアルファベットの形をした風船で部屋を飾り付けたり(「HAPPY BIRTHDAYって文字数多いなあ」などと愚痴りながらも」)乳児でも食べられるケーキを手作りしたりとはりきっていた。誕生日当日は僕の両親も妻の両親もそれぞれ来てくれたのだけどいずれも娘が大好きなイチゴを買ってきてくれたので冷蔵庫の中がいちごだらけになった。外にはまだ桜が咲いていた。思えば1年前にも妻と生まれたばかりの娘を病院に残して家に帰る途中に桜が咲いているのを見つけてひとりで眺めたのを覚えている。これから毎年娘が歳を重ねるたびに桜は咲くのだろう。これにてゼロ歳記も最終回。

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