ゼロ歳記08.笑うようになった

 五月下旬。娘の社会的微笑がはじまる。眠り際に表情筋の反射によって起こる生理的微笑は生後すぐから結構見れたのだけれど、この時期からは起きている時に外部からの刺激によって笑うようになった。名前を呼んだり身体を触ると花が咲くようにフワァッと笑顔に笑う。笑顔を見るとこちらも嬉しくなって際限なく構ってしまう。

 窓を開けての外気浴にも慣れてきたのでベビーカーでの散歩もスタートした。初めての日はおっかなびっくりといった様子だったものの、二日目からはだいぶ余裕のある表情をしていた。よその子どもの声、通り過ぎる車の音、風になびく植物の葉っぱなんかに興味ありげな反応を示した。陽射しはまだ少し眩しそう。

 市の新生児訪問で助産師さんが家にきてくれた。娘の発育は良好。「百点満点のママとパパ」と褒めて貰えて素直に嬉しくなる。

 そんなこんなで気付けば生後五十日が過ぎた。生まれてきたことも、そこからここまで無事に育ったことも、本当に大変だし、当たり前ではないし、凄いことだと思う。

 長く人間をやっていると、ともすれば「他者より優れていることが価値だ」「競争に勝たなければ意味ないんだ」的な価値観に飲み込まれてしまいがちなのだけど、何と比べずとも、人間ひとりが生まれ育つこと自体がこんなにすごいのだ。「生きているだけで価値がある」みたいな感覚が今はけっこうわかる。


 

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