ゼロ歳記26.あのお店がなくなっても

 九月下旬。娘の生活リズムはいっそう安定してきた。朝は七時頃に起きる。ミルクを飲んで少し遊んでから長めの朝寝をする。午後は二回お昼寝をする。二十時になったらお風呂を沸かし始める。入浴が済んだら五度目のミルクを飲んで二十一時を少し過ぎた頃に眠る。すくすく大きくなる。
 
 平日の午前中にひとりで東京に出かけた。東京に住んでいた頃に通っていた病院で書類を一枚書いて貰うため。帰り道に昼食を摂ろうとかつて行きつけだったラーメン屋を訪ねたら閉店していたので結構ショックを受けた。自分がこれまで行ったラーメン屋の中でもいちばんおいしいお店だったのに。新型コロナの影響もあったのだろうか。東京にいた十年間ずっと通っていた店だったし常にそこそこお客も入っていたのでまさかなくなるとは。

 十年。そういえば二〇〇九年に埼玉の実家を出て東京で暮らしはじめた時はいつか東京を離れるなんてことは思っちゃいなかった。ましてや(市は違うとはいえ)また埼玉に戻ることなんて絶対にないと思っていた。一方で結婚生活や娘との暮らしは二〇〇九年の自分ではきっと想像できなかったであろうほど楽しい。あの頃思い描いていた理想よりもずっと良いなと思う。十年一昔とはよくいったもの。

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