ゼロ歳記29.カエル、あるいは海を駆けるイルカ

 十月中旬。娘がずり這いを習得する。これまで寝返りでの移動だけだった娘に新たな移動手段が追加された。目線の向く方向に移動できるのはさぞかし楽しいのだろう。娘自身もとても嬉しそうにしていた。もちろん僕らも嬉しい。だがしかし事前に想像していたものと何かが違う。
 
 ずり這いというのはほふく前進のようなもので、まだ腰を持ち上げることのできない赤ちゃんが腕のちからで引きずりながら前進していくもの……だと思っていた。事実そういう形のずり這いをする赤ちゃんが多いはずだ。

 しかし娘は違った。あろうことか手を使わずに前進していくのである。脚だけで床を蹴って。びょん! びょん! びょん! と、まるでカエルのように、あるいは海面を跳ねながら走っていくイルカのように進んでいくのである。

 調べたところによるとこういう形でずり這いをする子は稀に居るらしい。活発な子に多いのだという。本人にとっても両手を空けたまま進めるわけだから玩具を持って移動できるので便利だそうだ。とはいえあまりにも予想外な動き、あまりにもコミカルな動作に、僕も妻も楽しくなって思わず笑ってしまった。


 

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