掌編小説 フクロウと仲良くなる方法 恋人とはもう三ヶ月ぐらい顔を合わせていない。最後にメッセージのやり取りをしたのだって一週間は前だ。「それって付き合ってるっていう?」と知人は顔をしかめた。 2018.12.20 掌編小説
掌編小説 わたしを飲みこむ理想郷 高校生の頃。金魚鉢で神さまを育てるのが流行った。育て方はとても簡単だ。金魚鉢の中に、ホームセンターなどで売られていた「神さまの種」を入れて、あとは毎日ほんの数滴ずつ、自分の血液を垂らしてやるだけだ。 2018.12.13 掌編小説
掌編小説 恋するスーパーヒーロー ボクは正義の味方だ。そして恋をしている。好きな人に嫌われたり、拒否されたり、不審がられることが、ビルを蹴散らす大怪獣よりずっと怖いのだ。 2018.12.07 掌編小説
掌編小説 あなたの眼だけが写す価値 あらゆる被写体を無価値に見せることが彼の作品の大きな特徴だった。燦然と輝く百万ドルの夜景も腐った犬小屋も、サンゴ礁の海も工場排水で汚れたドブ川も、何十億人に救いを届ける神様の彫像もこのちっぽけなおれも、彼が撮る作品の中では平等に無価値だった。 2018.12.02 掌編小説
掌編小説 機械の星の096 機械たちはお互いのことを番号で呼び合います。この番号は個体ごとの性能の高さを示すものでもあります。例えばそこの096という機械は、095という機械よりも少し優れており、097という機械よりは僅かに劣っています。 2018.11.29 掌編小説
ねこぺん家族 11月18日:冬毛になるいきものたち うちの近所には青い目をした可愛い野良猫がいて、僕はカフェラテと呼んでいるのだけど、ずいぶん懐いてくれているので仕事の合間や疲れたときにフラっと会いにいくとたくさん遊んでくれる。 2018.11.18 ねこぺん家族
掌編小説 ケモノと青い月 恋人の家から帰るまでのあいだ、わたしはずっとニコニコ、笑っていられたと思う。わたしがニコニコ笑っていることができれば、恋人は喜ぶ。わたしは恋人が好きで、彼に喜んで欲しいと思うから、一緒にいる時はいつもそうしている。 2018.11.17 掌編小説