掌編小説

掌編小説

また今度はいつか。またいつかは今度

やりたいことは結構たくさんあるけど、どれを叶えれば幸せになれるのかな。もしかしたら、何をやってもしんどいままなのかな。
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弱く優しい少年たちは

僕はいじめられっ子だった。身体が小さく喧嘩も弱くスポーツだって苦手だったからだ。けれどある時ダイキくんがみんなの前で言った。「喧嘩?スポーツ?そんなのでひとの順番が決まるなんてすごく変だと思う」
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母と、母の男、それから銃について

母は私を確かに愛していた。でもそれ以上にあの男を愛していた。どんな時でも私を守ってくれた母は、男が私を殴る時だけ、見て見ぬふりをした。
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あなたがヒトをやめる場所

『夫婦が別室で寝るようになったらそれは離婚の前兆』とテレビ番組のコメンテーターが話していた。交際をはじめたばかりの頃、夫はある生き物についてわたしに話してくれた。
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痩せた醜い野良犬になっても

私は二十七歳。恋人は妻子持ち。身の回りでは結婚や出産の話題が毎日のように飛び交う。彼の夫婦関係は冷めきっているけど、離婚した上で自分と再婚してくれるなんて甘い期待を抱くほど私の頭はお花畑ではない。
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彼は他のヒトビトと同じように、正しい遺伝子を用いて、正しい方法で以って生み出されました。ですから他の人間たちと、ほんの少しも違っているはずがありませんが、どういうわけだか彼は、耳が聞こえません。
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海辺と魔女の夜

決して叶わないことを強く望むのはすごく怖いじゃないか。望みをどんなに強くしたって叶わないのであれば、自分で火種から大きくした炎に、焼き尽くされるだけだ。
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フクロウと仲良くなる方法

恋人とはもう三ヶ月ぐらい顔を合わせていない。最後にメッセージのやり取りをしたのだって一週間は前だ。「それって付き合ってるっていう?」と知人は顔をしかめた。
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娘が死にたいと言った日

わたしの娘は良い子だ。美しくて賢く、笑顔が眩しくて、そして何より心が優しい子だ。その娘が、死にたいと言った。
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わたしを飲みこむ理想郷

高校生の頃。金魚鉢で神さまを育てるのが流行った。育て方はとても簡単だ。金魚鉢の中に、ホームセンターなどで売られていた「神さまの種」を入れて、あとは毎日ほんの数滴ずつ、自分の血液を垂らしてやるだけだ。
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恋するスーパーヒーロー

ボクは正義の味方だ。そして恋をしている。好きな人に嫌われたり、拒否されたり、不審がられることが、ビルを蹴散らす大怪獣よりずっと怖いのだ。
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あなたの眼だけが写す価値

あらゆる被写体を無価値に見せることが彼の作品の大きな特徴だった。燦然と輝く百万ドルの夜景も腐った犬小屋も、サンゴ礁の海も工場排水で汚れたドブ川も、何十億人に救いを届ける神様の彫像もこのちっぽけなおれも、彼が撮る作品の中では平等に無価値だった。
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機械の星の096

機械たちはお互いのことを番号で呼び合います。この番号は個体ごとの性能の高さを示すものでもあります。例えばそこの096という機械は、095という機械よりも少し優れており、097という機械よりは僅かに劣っています。
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教えて。教えて。魚

私の気持ちを知ろうともしないで、病気だなんて勝手に結論づけて、薬を飲めだなんて、あまりに酷いじゃないか。
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ケモノと青い月

恋人の家から帰るまでのあいだ、わたしはずっとニコニコ、笑っていられたと思う。わたしがニコニコ笑っていることができれば、恋人は喜ぶ。わたしは恋人が好きで、彼に喜んで欲しいと思うから、一緒にいる時はいつもそうしている。
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