掌編小説

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機械の星の096

機械たちはお互いのことを番号で呼び合います。この番号は個体ごとの性能の高さを示すものでもあります。例えばそこの096という機械は、095という機械よりも少し優れており、097という機械よりは僅かに劣っています。
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教えて。教えて。魚

私の気持ちを知ろうともしないで、病気だなんて勝手に結論づけて、薬を飲めだなんて、あまりに酷いじゃないか。
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ケモノと青い月

恋人の家から帰るまでのあいだ、わたしはずっとニコニコ、笑っていられたと思う。わたしがニコニコ笑っていることができれば、恋人は喜ぶ。わたしは恋人が好きで、彼に喜んで欲しいと思うから、一緒にいる時はいつもそうしている。
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あの日に望んだ美しさじゃなくても

虫人というのは虫の血が混じった人間のことだ。彼らは普段、普通のひととまったく同じ見た目をしているけど、満月の夜に青い花の匂いを嗅ぐと羽根や触覚が生え、巨大な虫の姿に変身するという。
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Don’t Look Back In Anger

母はきっと私に、いつまでも小さく弱く何も出来ないまま、何も自分で決められないままで居てほしかったのだ。
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骨と貝殻、マドレーヌ

彼に手を握られていたから、手首に巻いた腕時計の文字盤を見ることができず、ああ、ひとと手を繋ぐというのは、非常に不便なのだなと思いました。
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父のようにはなれない

子どもの頃からどこに行っても『あの人の娘だからきっと美人になるね』って必ず言われたのよ。そりゃ最初のうちは素直に、自分は将来美人になれるんだ楽しみだなって受け取っていたけど、十代にもなるとだんだん現実見えてきちゃうからさぁ。
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あの場所まであと半日

ねえそろそろ結婚するんでしょう? とわたしたちをよく知る友人たちにからかわれることもだんだん増えてきて、そういうことはもちろん、わたしの頭の中にも、おそらく彼の頭の中にもあった。
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金魚鉢の中へ

ああ替えが効かない相手が増えるほど一生は不自由になっていくというのに私が居ないとご飯も食べられないアンタたちはなんて不自由なんだろう!
天国を探して

天国を探して-第1話

アサクラさんのことを俺は嫌っていた。そして軽蔑していた。今年で二十四歳になるというのにこんなコンビニでフリーターをやっているような男だからだ。
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だってあなたは不幸の方しか見ない

――母はよく言いました。『お父さんは私たちよりも恵まれないひとをいつも助けている。私たちは恵まれているから、少しぐらい寂しくても我慢しましょうね』
声の墓標

声の墓標-第1話

おじいさんが変わってしまったのは、わたしがちょうど思春期に差し掛かった頃だ。その視線にはもう、かつてのような優しさは見受けられなかった。わたしは徐々におじいさんのことを怖いと思い始めた。
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星を拾う夏

この街は空が近いので夜になると流れ星がたくさん落ちてくる。だから星のかけらなんて、秋に見かける栗の実よりもたくさん落ちている。「この街で拾った星のかけらを燃やして、燃え尽きるまでの間に願いごとをすると、それは叶うんだって」
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どうしてあの子が選ばれたのだろう

貧しさそのものも嫌だったのだけれど、それ以上に、ここに生まれたからといって豊かさを諦める周囲の卑屈さを、強く嫌悪した。いつか豊かになって「自分たちはこの街に生まれたから豊かにはなれない」なんていっているやつらに、その間違いを認めさせてやるのだ。
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あなた無しでも生きることは簡単

お互いが居なければ生きてさえいけない。そう思っていたあたしたちの関係に変化が生じたのは去年の末頃だった。あたしたちは、お互いが居なくても生きていけるようになってしまっていた。
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