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辺川 銀
掌編小説
バニラはシロクマだった
私はきっと、彼から大切にされることはないだろうと思う。忘れられずにいるなら、大切にされなくても私は構わない。
2014.07.05
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「あの日のあたしは泣いていた」彼女は笑ってそう言った
ママの言いつけを破ったことはなかった。大人は子どもより正しいことを言うと、疑いもせずに信じてきたからだ。
2014.06.17
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身体を売る機械
ネリマは一度も地球の土を踏んだことがない。地球はとても良い場所だと、仲間のあいだで噂されている。
2014.05.30
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愛おしいから骨さえ残らない
わたしのママは貝なのだ。だからわたしもそのうち貝になる。娘のわたしもいつかは貝になる。
2014.04.08
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私が役に立たない日の出来事
今日。本当は彼と会えるはずだった。だけど会えなかった。起床してすぐに生理がやって来た。
2014.04.06
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モデルマシーン
その時には、わたしと同じ工場で、わたしと同じ姿形に作られたマネキンがこの店を訪れ、わたしの代りを務める。まるで何事も起こらなかったみたいに。
2014.03.04
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虚しさの木
普通に生きてるだけなのに、どうしてこんなに虚しくなるのだろう。わたしは何度も考えた。考えるたびに虚しさは募って、新たな洞が生まれた。
2014.02.24
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魔法の小箱のこと
木で出来た小箱がある。私はそれを手のひらに乗せてみんなに見せびらかした。最初に開けたひとの願いをひとつ叶えてくれる魔法の箱だと言った。
2014.01.21
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タマドリ
やいタマドリ。おれは幸せ者だ。何故ならおれはこの森の中でいちばん強いからだ。それに引き換えお前は不幸な奴だな。何故ならお前はてんで弱いからだ。
2014.01.03
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この人生に意味などあるのだろうか
彼のようになりたいと密かに憧れた。大人になった彼は僕のことなんて覚えていないだろう。
2013.12.24
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ぼくたちの地図
あなたは毎年町にやって来た。あなたは町に来るたびに描きかけの地図の写しをぼくに一枚くれた。
2013.12.22
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フクロウの話
ウグイスが僕のために餌を獲りに出かけた。ウグイスは馬鹿な鳥なので僕のことをウグイスのヒナだと勘違いして僕を育てている。
2013.11.07
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マカロニちゃん
僕は自分の生まれた理由を知らない。掃除機やディスクのプレイヤーや自動車などと違って僕は自分が何をして生きれば良いのかさっぱり分からない。
2013.10.27
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ゴールデンマン・サックス
彼は少し間をおいてから、忘れられるのが怖いからさと、口元の髭を軽く触って笑った
2013.10.24
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春はずっとずっと真夜中
少女に見えていないのなら、花を咲かす意味などひとつもないような気がした。二度と花など咲かせるものかと思った。
2013.10.10
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