ねこぺん家族 特別編4.いつかあなたが読んでくれますように そのとき僕はあまり気の利いた返しをすることができなかった。「おお……!」とか「すごいねえ……!」なんて言うばかりで、おそらく間抜けな顔をしていただろうと思う。 2019.10.28 ねこぺん家族
掌編小説 気持ち良い自傷と胸に息づくトカゲ トカゲの頭に触れた瞬間わたしはこころの半分をあのひとに渡した。名前も素性も知らないままで夜がくるたび落ち合いそのたび情を交わした。味も温度も質感も痺れもすべて覚えている。 2019.10.10 掌編小説
掌編小説 壊れた玩具と無限の彼方 私は想像する。幼い頃のこの人は、どういうふうに玩具で遊んだだろう。きっと手荒に遊んでいただろう。この人のもとにやってきた玩具は、傷や汚れや欠損が絶えなかっただろう。 2019.08.26 掌編小説