掌編小説 待ちびとの島 今日よりも良い明日が来ることはないから、生きて明日を迎えることも嬉しいことではない。生きていることが嬉しいことではないから、死ぬことは悪いことではなく、友だちが死んでも悲しんだりはしない。 2018.02.04 掌編小説
掌編小説 わたしの鳥のために 夫がわたしを抱けなくなってからどれだけ経っただろう。わたしの夫は、わたしがわたしのうつくしさを使うために必要な機能をすでに失くしてしまった。 2017.12.03 掌編小説
掌編小説 ひとり残らず僕らは病人だ 弟の背中には羽根が生えている。白鳥のように白くて綺麗な羽根だ。一方で彼の骨は普通の人間に比べて非常に脆くて弱く長時間立っていたり長い距離を歩いたりすることが出来ない。 2016.12.12 掌編小説
掌編小説 わたしは代替品 あのひとは彼女に深く心酔していた。もはや信仰といってもいいぐらいに。だから彼女が去っていったあと、あのひとはまるで偶像を彫る僧のように数十年もの歳月を費やし、彼女とまったく同じ姿形の、生きた人形を作り出した。 2016.07.28 掌編小説
掌編小説 くらげは今日もつめたいところで眠る あの時から、自分が誰かを好きになることはとても悪いことで、いつか誰かに好意を受け入れてもらえる時が来るまで、許されることはないんだろうなと思ってしまっている。 2016.05.15 掌編小説