掌編小説

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白い白い金属

私の身体にピアスの穴が開いたり、刺青の数が増えたりしていく過程を見て、父はときどき私に、痛くないのか?とだけ尋ねた。
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ミルクティーの海

この場所は楽園だからこの場所を出てミルクティーの海の向こう側なんか行っても、そこには悪いものしかないんだ。そう言う彼は悲しそうな表情をしていた。
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猫と自販機

不感症なのにセックスをするのは、そうすればわたしのことを嫌いにならずに居てくれるし、わたしに対して優しくしてくれるからです。
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愚者のホスピス

本物だって死ぬまで信じてましたね。ぜんぶ偽物なのに。幸せそうな顔で死んでいますね。
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好きが飽和する

次の煙草にウサギは火を点ける。月は好きなんです。でも帰ったら嫌いになってしまうような気がするんですよそういうことってたまにありませんか?
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すこし違った遊びをしていた彼女は

好きじゃない男のひととセックスしている時間というのは考え事をするのに結構向いている。
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すこし違った遊びをしてみただけ

わたしたちまだ中学生で、だからたぶんこの中で私だけがそのことを知ってる。放課後になるとわたしは部活動をさぼって男の家に出かける。
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機械は拗ねてもエラーを起こせません

あなたの笑顔を目にしたわたしは条件反射で幸福感を感じた。あなたの幸せがわたしの幸せだと、恋人同士だった頃に刷り込まれたからだ。
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恋ならば落ちよう愛ならば誓おう

誰よりも速く飛べる飛行機を求めていたゴンゾは一目でアバンテに恋した。それから十二年の月日が経ち、今のアバンテは一昔前の終わった名機に過ぎない。
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あしたの朝もきちんと起きねばならない

働きたくないよう。と、彼はわたしに甘えた声で言った。彼の職業は死神。主な業務内容はひとを死なせること。明日は月曜日だ。
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どうかどうかあなたはお幸せに

捨てられたわたしはあのひとのことを恨んだ。報いを受けろ、絶対許さないと、毎日毎晩あのひとを呪った。あのひとの不幸だけを願った。
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羽根も持たない可哀想ないきものたちの話

コンビニに並んでいる雑誌の表紙に彼女の姿を見つけた。わたしばかりが上手に変われなかった。
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昨日の羊

どんより暗く大きな雲が近づいてきました。動物たちはみんな避難しました。脚を怪我した一頭の羊と、食欲のない一頭の狼。この二頭だけが草原に残りました。
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明くる朝には跡形を探しに出かける

僕は向日葵に水をあげてるんだ。少年は私の方に目をくれることもなく答えた。向日葵の葉先は水気を失い黄土色をしていた。
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ウサギ怪人の話

怪人に助けを求められても大抵は罠だから相手したらいけないっていうのが社会の常識だった。なのに私はウサギ怪人の小さな身体を背負って家へ運んでいた。